「あれも大概、手の掛かる人たちだよねえ、ハロ?」
 アレルヤ・ハプティズムは部屋に残されてしまった独立型AIに、空しく語りかけている。けれどもそこにいるのは彼一人ではなかったから、アレルヤにとってはさしたる問題ではなかった。
 バスタオルや服は同僚のものを勝手に拝借したので、まったく苦労はしていない。普段であれば遠慮が先に立つような場面でも、実際少少立腹していたアレルヤにはそれ程高いハードルとは成りえなかった。
 ロックオンが少年に何ひとつ伝えていないと悟ったからだ。
 そのくせ影響は与えるから、子どもは無自覚に追い詰められる。
「傍から見てると良く判る、って本当だなあ」
 理解してやれるわけではないのだが。
 どうしても、少しずつすれ違っているような人たちだ。
 あのロックオン・ストラトスが八つも年下の少年に振り回されているのも驚きなら、凍えきったような殻から何故か酷く躊躇いがちに、けれど彼限定で必死に手を伸ばす子どももいとおしい。

 ―――残念じゃねえのか、折角手懐けようってのに掻っ攫われてよ。

「僕はハレルヤみたいに正直じゃないからね。それに、掻っ攫おうにも、もうおっきな親鳥がついてしまっているもの」

 ―――横から咬み付いてやりゃあ面白いぜ。咬み付いて、喰い千切ってやればきっと綺麗な綺麗な血を噴くさ。あれは、結構俺に似てる。本人や周りが気付いてなくてもな。だから気に入ったんだろう、アレルヤ。

「そういう君こそ、いつもより饒舌だよ。気に入ったのはそっちだろう」

 ―――同じだよ。

 ハレルヤという存在と、対話を繰り返していたアレルヤもまた、そうだねと答えた。
「僕たちは、本当は同じものだもの」
 それは酷く満たされた毒のような甘美。
 けして彼等のようには成り得ない。


2008/01/28 LIZHI
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